むかしはね! いまはね! どうする? 子育てギャップ

食べ物の口移し

2015.09.16

 

カンタン離乳食!?

じいじ・ばあば世代とパパ・ママ世代の「子育てギャップ」のなかで、トップ3に必ず入る、問題こじらせ案件が、「食べ物の口移し」です。

じいじ・ばあば世代より上の世代では、赤ちゃんの離乳食として、大人が一度かんで柔らかくしたものを食べさせるという光景が当たり前でした。

また、昔は赤ちゃんが使う箸やスプーンなどの食器を、大人と共有することも普通に行われていました。

しかし、最近の医学研究により、虫歯の元となる虫歯菌のうち「ミュータンス菌」、慢性胃炎や胃潰瘍、胃がんの原因となる「ピロリ菌」が、唾液を通じて感染することが判明!

ミュータンス菌って、いかにも恐ろしげな名前ですよね。突然変異して大暴れしそう。それに比べると、ピロリ菌はなんだか笑っちゃうような名前。しかし、胃潰瘍や胃がんになったら、笑いごとではすまされません。すさまじく痛いです。

生まれたばかりの赤ちゃんはどちらの菌も持っていません。まさしくクリーンな状態です。

にも関わらず、周りの保菌者の唾液を通して、瞬く間に感染してしまうのです。

そして実は、じいじ・ばあばもパパ・ママも、ほとんどがミュータンス菌、ピロリ菌の保菌者。

離乳食を作っていて、ママがスプーンで一さじ味見をする、それだけで感染してしまうのですから、赤ちゃんの口中の純潔を守るのはなかなか大変です。
 

ミュータンス菌とピロリ菌

「きちんと毎日歯を磨かせているのに、子どもが虫歯になってしまった」と嘆くパパ・ママをよく見かけます。

これは、虫歯についての認識不足といえます。

2002(平成14)年に国際歯科連盟(FDI)の公式声明により、「虫歯は感染症」という考え方が定説となりました。

つまり、虫歯の元となる虫歯菌、その代表である「ミュータンス菌」の感染を防がなければ、歯を磨いていても虫歯になってしまうのです。

ミュータンス菌に感染してしまうと、他の虫歯菌も勢いを増します。虫歯菌の勢力は、2歳から4歳くらいで決まるとされています。

スウェーデンでは「2歳までにミュータンス菌に感染していない子どもは、4歳時のむし歯の数が0.3本。2歳までにミュータンス菌の感染が確認された子どもは4歳時のむし歯の数が5本ある」という調査結果が報告されています。

赤ちゃんの頃からミュータンス菌が口に入らないようにすれば、大きくなっても虫歯になりにくくなります。

大人の口中に存在するのは虫歯菌だけではありません。

2005(平成17)年、ピロリ菌発見の功績により、オーストラリアの病理学者ロビン・ウォレンとバリー・マーシャルにノーベル生理学・医学賞が授与されました。これにより、胃の中に存在する病原菌「ピロリ菌」が広く知れ渡るようになりました。

ピロリ菌は胃潰瘍や胃がんの原因となる有害な病原菌です。

ピロリ菌の感染症は世界中で見られますが、日本は先進国の中でも感染率が高く、50代より上の世代では7割を超えます。

「ミュータンス菌」も「ピロリ菌」も、今世紀に入ってから広く知られるようになった病原菌。

なので、2000年以前に子育てを終えたじいじ・ばあば世代には、あまり知られていない新常識といえます。

じいじ・ばあばが孫に自分の箸で物を食べさせたり、かわいさのあまり口にチュウするのを、「やめてください!」とママが必死に止めたという話をよく聞きます。

そこで「人のことをまるでバイ菌みたいに……」と気分を害された方もいるかもしれません。

あるいは「赤ちゃんも少しは雑菌に対する免疫をつけた方がいいのよ」とうそぶく人も出てくると思います。

ですが、近年は病気に対する考え方も「治療も大事だけれど、予防することが大事」という見方を重視するようになっています。

また、最近は「潔癖症」といえるほど清潔意識の強い人が増えていますが、若いパパ・ママ、あなたはどうですか?

じいじ・ばあば世代が赤ちゃんと接するときには、手を洗い、歯を磨き、できれば胃の中のピロリ菌を病院で除菌して、というぐらいの心がけが必要と心しておいた方がいいかもしれません。

(参考)

『子育ての常識・非常識』保健同人社電話相談室:著 監修:高橋悦二郎 保健同人社

ピロリ菌研究の歴史|病気のことをもっと知ろう

くらし☆解説 「虫歯にならないためには?」  くらし☆解説  NHK 解説委員室  解説アーカイブス

2歳までが虫歯予防の効果を最大に発揮する?  日本人の歯の寿命をのばす会

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