むかしはね! いまはね! どうする? 子育てギャップ

離乳食、いつ始めるの?

2016.09.08

 

「離乳準備」は必要なし

昭和の時代、戦後から20年ほどは、日本全体が貧しく、栄養状態が悪かったため、赤ちゃんの発育状態に影響が出ていました。
母乳不足や粉ミルクの品質が不十分などの事情が重なったため、昭和30年代頃は離乳開始を生後3~4か月に早め、準備段階として水で薄めた果汁を飲ませるなどで、赤ちゃんの栄養不足を補うように指導されていました。

昭和34(1959)年に乳等省令(乳及び乳製品の成分規格等に関する省令 厚生労働省)で「特殊調製粉乳」の規格が制定され、粉ミルクの品質が改善された後も、この習慣はずっと続いていました。
平成3(1991)年度版の母子健康手帳には、「生後3~4か月」欄に「薄めた果汁やスープを飲ませていますか」とあり、「離乳準備」としての果汁やスープは、じいじ・ばあばにとって常識だったのです。

しかし、平成13(2001)年、それまでの常識を覆す大きな変化が訪れました。アメリカ小児学会が、乳児に果汁を与えることについて、

・生後6か月未満の乳児に、果汁は栄養学的メリットがない。
・脱水や下痢のときの飲料としては、不適切である。
・果汁の過剰摂取は、栄養障害、下痢、鼓腸、腹部膨満、う歯に関係する。

と発表して、「生後6か月までは果汁を飲ませるべきではない」と勧告したのです。

アメリカの動きに呼応して、厚生労働省は、平成19(2007)年3月、「授乳・離乳の支援ガイド」で、「乳児に果汁を飲ませることで、乳汁を飲む量が減り、たんぱく質、脂質、ビタミン類や鉄、カルシウム、亜鉛などミネラル類の摂取量が低下する。乳児期以降の低栄養や発育障害との関連が見られ、栄養学的な意義は認められない」と解説しています。

アメリカ小児学会のように明言していませんが、要するに「乳児に果汁を飲ませるべきではない」という意味です。

そして、平成20(2008)年度の母子健康手帳から、「生後3~4か月」欄の「薄めた果汁やスープを飲ませていますか」という部分を削除するように自治体に通知しました。

それまで推奨されていた「離乳準備」という考え方がなくなったことで、小児科医や保健師さんら育児指導者もだいぶ戸惑ったようです。

現在は、たとえ薄めた果汁やスープでも、アレルギーを発症するリスクがあるため、赤ちゃんに与えるのは、離乳食の重湯に慣れた後という指導となっています。

「離乳前の果汁はNG」というのは、9年前からの新常識ですから、じいじ・ばあば世代にとっては「初耳」という人が多いのではないでしょうか。

 

離乳食開始のタイミング

厚生労働省が策定した平成19(2007)年の「授乳・離乳の支援ガイド」では、「離乳の開始とは、なめらかにすりつぶした状態の食物を初めて与えた時をいう」と定義。離乳食の開始時期の延期による「食物アレルギー」の予防効果について、

・生後4か月までに離乳食をスタートさせた場合、2歳、10歳までに慢性湿疹にかかっている割合が高い。
・生後12週から15週に離乳食をスタートさせた場合、湿疹や喘鳴になる子が多い。
・卵や牛乳を食べさせる時期を遅らせた子どもは、5歳半で湿疹となるリスクが高い。
・離乳の開始時期を遅らせることで、ある程度のアレルギーの予防効果が認められているが、長期的な予防効果については証明されていない。

と報告しています。

そして、離乳食のスタート時期として、生後4か月では食物アレルギーを発症するリスクが高いとし、それまでの「生後5か月になった頃」から「生後5、6か月頃」に変更しました。

日本小児アレルギー学会が発行する『食物アレルギー診療ガイドライン2012』でも、離乳食の開始は5~6か月を推奨しています。

厚生労働省では、昭和60(1985)年から10年ごとに「乳幼児栄養調査」を実施しています。
4回目となる平成27(2015)年度調査では、全国の6歳までの子ども3,871人の母親(もしくは養育者)から回答を得ました。

離乳食の開始時期は、「6か月」が44.9%で最も多く、10年前より1か月遅い時期にスライドしていました。この変化には、「授乳・離乳の支援ガイド」での変更が深く関わっていると考えられます。

離乳の開始時期

同調査で、離乳食を開始する目安としたのは、「月齢」が84.3%、「食べ物を欲しがるようになった49.5%、「体重など発育状態」14.2%、「スプーンなどを口に入れても舌で押し出すことが少なくなった」13.5%、「開始するよう指導を受けた」11.8%、「なんとなく」7.5%という結果でした。

離乳開始の目安

○離乳の開始時期、発達の目安(平成19年「授乳・離乳の支援ガイド」より)

・首のすわりがしっかりしている
・支えてやると座れる
・食物に興味を示す
・スプーンなどを口に入れても舌で押し出すことが少なくなる(哺乳反射の減弱)

※哺乳反射とは、口の周りに物が触れると口を開き、口に形のある物を入れようとすると、舌で押し出そうとする反射的な動き。生後4~5か月から少しずつ消え始める。

大人が食事をしているところを赤ちゃんが興味ありげにじっと見て、食卓に手を伸ばしたり、よだれを出したりするようになったら、それが離乳食開始のサイン。
「授乳・離乳の支援ガイド」に目安が示されていますが、8割以上の親が、基準としてもっとも明確な「月齢」を目安にしているようです。

離乳の開始時期を早めることで、パパ・ママにとって手間がかかる「授乳」の負担が少なくなるわけですが、赤ちゃんにとっては、未熟な消化器官で離乳食を消化・吸収しなければならないので、離乳開始が早すぎると、それだけ身体への負荷が大きくなります。

逆に、離乳食の開始時期が遅すぎると、食べ物に興味を失うことで、成長してから偏食になったり、食べ物をうまく噛むことができなかったりなどの問題が起こることがあります。鉄分不足による貧血も心配されます。

母子手帳に書かれている「乳児の身体発育曲線」を参考に、月齢5か月以降で体重が標準より下回っているようであれば、母乳や粉ミルクだけでは栄養が足りていないと判断し、離乳食を始める必要があるでしょう。

(参考)
岐阜県『孫育てガイドブック~孫でマゴマゴしたときに読む本』

奈良県みんなで子育て孫育て『みんなで子育てぽっかぽか』

エッ、そうだったんだ!?生後6ヵ月前の赤ちゃんに“果汁”を与えちゃダメなワケ mamanoko(ままのこ)

アレルギーラボ

厚生労働省|授乳・離乳の支援ガイド

平成27年度 乳幼児栄養調査結果の概要 |厚生労働省

『子育てハッピーアドバイス 初孫』明橋大二 (著)、吉崎達郎 (著)、1万年堂出版

前へ 次へ