応急処置いま・むかし(耳・目の手入れ)
2016.06.23
耳の手入れ
シャンプーや水遊び、プールなどで、子どもの耳に水が入ることはよくあります。
昔は、水が入った方の耳を下に傾けて、逆側の側頭部を平手でポンポンと叩きながら、片足ケンケン(ジャンプ)という光景がよくみられました。
しかし、最近は、「何もしない」が新常識となっています。体温で耳の中の水分が蒸発するのを待つだけです。
とはいえ、子どもによっては、耳にたまった耳垢が水でふやけて膨張し、耳穴をふさいでしまうことがあります。
これは耳垢栓塞(じこうせんそく)という症状で、耳鳴りや軽い難聴、外耳炎をひき起こします。
耳垢は外耳道の入り口近くにたまり、少しずつ入り口のほうに移動して、耳の穴から自然に外に落ちるようになっています。
しかし、近年の清潔・抗菌志向のため、子どもの耳掃除を積極的に行う家庭が多く、それで耳垢栓塞や外耳炎を引き起こす例が増えているのだとか。
そうなったら家庭で対処するのは難しいので、病院で診てもらう必要があります。
それでは、子どもの耳掃除はどうすればいいのでしょうか。
一般社団法人日本耳鼻咽喉科学会のサイトによると、
「耳掃除は綿棒などを使って、見える範囲のものを無理せずにとるようにしてください。耳の中をあまりいじると、耳垢を奥に押し込んだり、外耳道を傷つけます。また、耳掃除をしているところに誰かがぶつかったり、歩きながら掃除している時にひじが壁などにあたって、鼓膜を傷つける事故が多いので、注意が必要です。人によっては、外耳道が狭いために、耳掃除がしにくいこともあります。このような場合は、耳垢は耳鼻咽喉科でとってもらってください」
とのことです。
子ども時代に、母親の膝に頭を置いて耳掃除をしてもらい、それがとても心地よかったという思い出をもつ人も多いと思います。ですが、その姿勢で耳掃除を行うと、耳垢がどんどん奥に入り込んでしまって、かえってよくないのだとか。子どもの耳掃除をするときは、直立した姿勢で行う方がベターです。
子どもの耳の手入れは、風呂上りやプールの後は、乾いたタオルで耳の外側をふく程度にして、綿棒や耳かきでの耳掃除はあまり熱心に行わない方がいいようです。
耳垢栓塞の予防のためには、一年おき程度に耳鼻科で耳垢を取ってもらうようにするといいでしょう。
泳いだ後の目の手入れ
昔はプールに入った後には、必ず目を水道水で洗っていました。
しかし、今は特に理由がないかぎり、洗っていません。
平成20(2008)年に、慶応義塾大学医学部眼科グループの石岡みさき先生が「プールと同じ濃度の塩素を加えた生理食塩水で洗眼すると、塩素によって角結膜の上皮が傷つく。水道水による洗眼でも、目の表面を保護しているムチン(粘膜を保護する成分)が減少し、角膜上皮のバリア機能が障害された」という論文を発表しました。
この論文を受けて、同年に日本学校保健会では「プールにはゴーグル使用が望ましい。またプール後の水道水による簡単な洗眼は行ってよいが、積極的に推奨するものではない。なお児童生徒の体質によっては、学校医の指導のもと、プール後に防腐剤無添加の人工涙液の点眼や、簡単に水道水で目のまわりを洗うなどの対応も必要である」という見解を発表しています。
こうした事情から、今でもプール施設には洗眼用の水道がありますが、あまり利用されなくなりました。
また、昔は学校のプール実習では、ゴーグルの使用を禁止する場合が多かったのですが、今は安全なゴーグルであれば使用を認めるところが一般的になりました。
そして、プール後の洗眼が一般的ではなくなったとはいえ、子どもたちには、海や川、水質に疑問がある場所などで水遊びをしたり、泳いだりしたときには、必ずきれいな水道水で目を洗う(短く5秒以内で!)ことを教えておく必要があります。
(参考)
『子育てハッピーアドバイス 初孫』明橋大二 (著)、吉崎達郎 (著)、1万年堂出版