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こんなに変わった、運動会の種目

2016.08.11

 

日本初の運動会

日本で初めて行われた運動会は、明治7(1874)年、東京の海軍兵学寮で開催された「競闘遊戯会」と言われています。明治11(1878)年には札幌農学校(北海道大学の前身)で「遊戯会」、明治16(1883)年には東京大学で運動会が開催されました。
当初は子ども主体の運動会というより、日本のエリート予備軍を外国人教師が指導するアマチュア・スポーツ競技会といった趣でした。ちなみに札幌農学校で指導に当たったのは、『Boys,be ambitious.(少年よ大志を抱け)』のクラーク博士です。

運動会らしい種目としては、「パン食い競争」がすでにこの頃から行われていたそう。日本初の「パン食い競争」は、海軍兵学寮の競闘遊戯会で行われたという説と、札幌農学校の遊戯会の第15回大会で「食菓競争」という名前で行われたのが最初という2つの説があります。

運動会が全国の小中学校で行われる一般的な行事となったのは、1880年代半ばごろからです。最初の頃は、神社の境内や海辺、川原、丘などで行進を中心とするものだったのですが、明治33(1900)年以降、運動会の種目が急増し、地域の人達を巻き込んでの「祭り」としての色合いが濃くなっていきました。

明治38(1905)年の長野市立学校連合運動会では、敵陣占領、徒手体操、俵送り競争、綱引き、徒歩競争、だるま落とし、障害物競走、旗倒しなど50以上の種目が行われています。すでにこの頃から、現在も行われている種目があることが驚きです。

戦時中の昭和15(1940)年、兵庫県の北野尋常小学校で行われた運動会では、「節米競技(パン食い競争)」、「節電競技(提灯に点火して走る)」、「精神集中競技(スプーンレース)」などの種目が行われました。
そう、昔から「パン食い競争」は、運動会に欠かせない種目だったようです。

 

昭和後期の運動会

昭和60(1985)年11月~12月、ベネッセ教育総合研究所が全国の小学校に行った調査結果を見てみましょう。2,500校に質問紙を郵送し、得られた有効サンプル数は1,113校でした。

運動会で実施されている代表的な21種目について、実施率をたずねた結果、「徒競走」95.7%、「綱引き」90.8%、「PTA競技」87.7%、「玉入れ」86.7%、「紅白対抗リレー」84.1%が上位5種目でした。これらは実施率8割以上で、ほとんどの学校で行われていたと思われます。

昭和の運動会種目

この調査のレポートでは、

「『徒競走』や『綱引き』など伝統的な種目は今でもなお多くの学校で見られる。しかし、地域とのつながりを示す種目(地区対抗競技など)が減少し、競争色のうすい華やかな種目(フォークダンスなど)が好まれる傾向にある」

と解説しています。

「10年前の運動会と比べて、運動会はどう変化したか」という質問では、

・整然と進行させるための指導が強化された
・競争中心の傾向が弱くなった
・地域ぐるみの行事という性格が弱くなった
・運営や進行への子どもの参加機会が少なくなった

という傾向が見られました。
31年たった現在、こうした傾向はさらに強くなっているように思われます。

 

ダンスの発表会? 平成の運動会

平成24(2012)年6月、「ベネッセ教育情報サイト」が全国の園児、小学生、中学生の子どもをもつ保護者に行ったアンケート(回答数2,621人)では、「子どもが参加した競技種目」では、「リレー」43.0%、「徒競走」36.7%、「ダンス」33.6%がベスト3でした。

平成の運動会種目

園児から中学生までと調査対象の年齢幅が広く、運営する側ではなく参加した側の回答なので、前項の調査結果と単純に比較はできませんが、ここで3位の「ダンス」に注目してみましょう。

平成24(2012)年4月から、学習指導要領により、中学校の体育で男女共に「武道」と「ダンス」が必修になったことを受けて、小学校、高校でも「表現運動系及びダンス」が必修となっています。
このため、小中高の先生方は、昭和の時代よりもずっと熱心に「ダンス」指導に取り組んでいます

一方、平成4(1992)年より「YOSAKOIソーラン」というダンスがブームとなり、全国に広がっていることをご存じでしょうか。
「YOSAKOIソーラン」とは、高知県のよさこい祭りの「鳴子」と北海道の民謡「ソーラン節」をミックスした比較的新しい踊りです。発祥地である札幌市では「YOSAKOIソーラン祭り」が毎年6月に行われ、観客動員200万人という一大イベントとなっています。

この「YOSAKOIソーラン」を体育の授業で行う学校が増えたことで、日本的な振り付け、威勢のいい掛け声などが子どもたちに受け、運動会で盛り上がりを見せる演目として、今や「定番」の様相を呈しています。

このほかに、山形県の「花笠音頭」沖縄県の「エイサー」青森県の「じょんがら」など、日本各地の伝統的な舞踊を体育の授業で取り入れる学校が多くなっています。
そうした流れから、「ロックソーラン」「よさこいブギウギ」「よさこいエイサー」などさまざまな新顔ダンスが生まれています。
運動会では、それぞれの地方の伝統的な舞踊と新顔が激しいせめぎ合いを見せている……とつい勝手に想像しますが、実情はどうなんでしょう。気になります。

明治時代に始まった運動会。時代の変化とともにすたれてしまった種目がある一方で、「綱引き」「ムカデ競争」「障害物競走」など今も人気の種目は数多くあります。

そんな中で、「徒競走」と「組体操」というおなじみの種目に、今、変化が訪れています!!(次回に続く)

 

(参考)
運動会と日本近代|青弓社ライブラリー 著:吉見俊哉 他

近代子ども史年表1926‐2000 昭和・平成編|河出書房新社 編:下川 耿史

ヤマザキ「パンの街かど」|パンのミニ百科

ベネッセ教育総合研究所|1986年度 VOL.6-6運動会(全国調査)

待ちに待った運動会。当日のお弁当はどうしてる?|ベネッセ教育情報サイト

YOSAKOIソーラン祭り 公式ホームページ

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