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ドライケア(ドライテクニック)

2016.03.03

 

胎脂とドライケア

昭和初期~中期、出産が家庭内で行われていた頃は、洗い桶にお湯を張って、生まれたての赤ちゃんの身体をさっと洗っていました。これがいわゆる「産湯をつかわせる」。赤ちゃんの身体についた血液をお湯で流したのです。

現在はほとんどの場合、産院で出産となりますが、21世紀に入ってから、多くの産院で、「ドライケア(ドライテクニック)」がとられるようになりました。

ドライケアは、乾いたタオルで血液や胎便をぬぐうだけで、赤ちゃんに産着を着せて、そのまま4~5日間沐浴をしないという方法です。
これは、昭和49(1974)年、アメリカ小児科学会がドライケアを勧めたことに始まります。
なぜドライケアが勧められたかというと、産まれた時に、赤ちゃんの体についている白い脂「胎脂(たいし)」を保護するためなのだそうです。胎脂には赤ちゃんの体温を保ち、皮膚表面からの雑菌の侵入を防ぐ役割があります。

胎脂をつけたままの方が、赤ちゃんの健康を保持できるということで、平成12(2000)年頃から、日本の産院でもドライケアが取り入れられるようになりました。日本では出産直後はドライケアもしくは清拭だけにして、1日目から沐浴を行う産院が多くなっているようです。なかにはアメリカ式に退院までドライケアという産院もあるようです。

 

胎毒と石けん

現在アメリカでは、退院後は、へその緒が自然に取れるまで、タオルの上に赤ちゃんを寝かせて、お湯で絞った布やスポンジで身体をさっと拭くだけの「スポンジバス」が主流です。

日本でも最近はドライケアの延長なのか、母親学級などで、「沐浴では赤ちゃんの顔は濡れたガーゼでさっと拭くだけ」と指導されることが多くなっているようです。
しかし、アメリカに比べて湿気の多い日本の気候・風土では、へその緒がとれるまでの2~3週間、ずっと沐浴をしなかったり、石けんで汚れを落とさないままでいたりすると、健康面での問題が生じます

赤ちゃんの皮脂腺は活発に働くため、ときには思春期の子どものように頭部からフケ(脂漏)が出たり、顔に湿疹ができたりすることがあります。これを放置しておくと、ジュクジュクしたカサブタ状になってはがれにくくなるのでご注意を!
昔の人はこれを「胎毒(たいどく)」と呼んでいました。母親の胎内で赤ちゃんが受けた毒素が原因と思われていたのです。現在は胎毒の存在は否定されています。
こうした症状は、脂漏性湿疹(しっしん)急性湿疹、膿痂疹 (のうかしん)性湿疹などで、まとめて「乳児湿疹」と呼んでいます。

乳児湿疹は、1日1回、頭部や顔を石けんで洗っていれば、生後6~8週で自然に治ります。このとき、ゴシゴシと強くこすってはいけません。よく石けんを泡立てて、フワフワの泡でなでるように洗った後は、石けん分が残らないようによくすすぎましょう。そして、沐浴では、油脂成分が入った入浴剤、ベビーオイル、オリーブオイル、軟膏などは、湿疹が悪化するので使用を控えるようにします。

(参考)
世代によって育児常識は違う(6):皮膚の手入れ 澤田啓司の「ブラーヴォ! 赤ちゃん!!」

Mama’s Friend 赤ちゃんのお風呂をどうする?!〜日米の違い〜

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