あおむけ寝? うつぶせ寝?
2015.10.19
あおむけ寝 V.S. うつぶせ寝
新生児期の赤ちゃんは顔が見える「あおむけ寝」で寝ています。
寝返りがうてるようになると、顔を下に向けた「うつぶせ寝」で寝る子が出てきます。
寝返りをうって、あおむけに戻ることができないままで寝てしまうのですが、そのままうつぶせ寝で寝ていると、環境によっては呼吸困難や乳幼児突然死症候群(SIDS)を引き起こす可能性があるので、注意が必要です。
昭和63(1988)年~平成元(1989)年ごろ、うつぶせ寝が全国的なブームとなりました。
それまでは新生児期の赤ちゃんはあおむけ寝にするのが普通でした。
ところが、当時アメリカではうつぶせ寝にすることが主流で、うつぶせ寝の方が頭の形がよくなる、吐かない、眠りが深くなるなどのメリットが、マスコミを通して全国に広まったのです。
うつぶせ寝では窒息を避けるため、固めの敷き布団、掛け布団も軽い綿毛布やタオルケットを使用します。当時「うつぶせ寝用布団」「うつぶせ寝用産着」などが発売され、人気商品ともなりました。
しかし、このすぐ後に急転直下のできごとが起こります。
平成4(1992)年、アメリカ小児科学会(AAP)が、「すべての健康な乳児はあおむけで寝かせること」を勧告する声明を発表したのです。
これは「うつぶせ寝により、乳幼児突然死症候群(SIDS)で死亡する可能性が有意に高い」という報告に基づいたものです。
乳幼児突然死症候群(SIDS)とは、それまで元気だった赤ちゃんが、ある日突然死亡する病気で、生後2か月から6か月の乳児に多く発生します。
日本での発症は年々減少傾向にありますが、平成23(2011)年には全国で148人の赤ちゃんがSIDSで亡くなっています。
SIDSの原因はまだわかっていませんが、うつぶせ寝、両親の喫煙、人工栄養児で多いことが判明しています。
そのため、厚生労働省ではSIDSの発症を防ぐため、次の3つを勧めています。
・うつぶせ寝は避ける
・たばこはやめる
・できるだけ母乳で育てる
現在は、産科医も医学上の理由でうつぶせ寝が必要な場合以外は、あおむけ寝で寝かせるように指導しています。
一方、アメリカ小児科学会(AAP)はSIDSを含めた睡眠時の乳児の死亡リスクを減らすため、
・あおむけ寝・固めの敷布団・母乳育児・母子同室・添い寝なし・予防接種・おしゃぶりの使用・子ども用ベッドにやわらかいもの(枕、ぬいぐるみなど)を置かない・暖めすぎない・たばこ/薬/アルコールを避ける
などを推奨しています。
あおむけ寝で頭の形が悪くなる?
世界的に赤ちゃんの寝かせ方として「あおむけ寝」が推奨されるなか、さまざまな誤解も生まれているようです。
そのひとつが「乳児をうつぶせにしてはいけない」で、赤ちゃんが起きている間も、うつぶせの姿勢をとらせてはいけないという勘違い。
赤ちゃんが起きている間は、うつぶせの姿勢をとることで、全身の筋肉が刺激され、自然にハイハイやお座りができるようになります。
生後5か月頃から寝返りが自由に打てるようになると、赤ちゃんは自分の好きな寝方で眠るようになります。この時期に、ぐっすり眠っている赤ちゃんを起こして、無理にあおむけ寝にする必要はありません。
また、あおむけ寝にすると、赤ちゃんの後頭部が平らになる、いわゆる「絶壁頭」になると言われていました。
このため、昭和30年代頃より、赤ちゃん向けの寝具として「ドーナツ枕」が発売されました。
丸い形で真ん中が空洞のドーナツ枕を使うことにより、頭の形が扁平にならない、寝相の癖を矯正する、耳の形がよくなるなどの効果がうたわれていたのです。
しかし、現在は昔ほどドーナツ枕は使われなくなりました。
理由として、首のしわの部分にあせもができやすい、赤ちゃんが寝がえりしにくい、扁平になった頭の形は成長するにつれて自然に治る、など、ドーナツ枕のかつてのユーザーの意見が反映されたことによると思われます。
今は赤ちゃん用の枕として、洗ってもすぐに乾き、まめに交換しやすいということで、色の薄いフェイスタオルを四つ折りにして敷くという人も多いよう。ご参考までに。