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春の運動会? 秋の運動会?

2016.08.04

 

運動会の開催時期

小学校で保護者が参加して盛り上がる行事といえば、遠足と運動会。
特に運動会は、借り物競争や二人三脚など、親子で協力する競技種目も用意されていることから、家族全員で心待ちにしているご家庭も多いと思われます。

ところで、みなさんの地域では運動会はいつ開催されているでしょうか。
昭和の時代、運動会といえば、秋に開催するものというイメージがありました。俳句でも「運動会」は秋の季語です。
ところが、平成以降、運動会を春(5~6月)に行う学校が多くなっています

今から31年前、昭和60(1985)年11月~12月、ベネッセ教育総合研究所が全国の小学校に行った調査では、運動会の開催時期は、春が32.2%、秋が48.1%、春と秋両方が19.7%でした。
パパ・ママ世代が子どもの頃は、小学校の約7割が秋(春と秋両方も含む)に運動会を行っていたのです。

今から4年前、平成24(2012)年6月、「ベネッセ教育情報サイト」が全国の園児、小学生、中学生の子どもをもつ保護者に行ったアンケートを見てみましょう。
運動会の開催時期で、最も多かったのが「9月」で36.9%、次いで「5月」25.8%、「6月」17.9%、「10月」16.6%となっています。
秋(9月・10月)が53.5%、春(5月・6月)が43.7%で、春と秋で二分しており、やや秋の方が多い結果となりました。

最近では、平成27(2015)年5月、気象情報会社ウェザーニュースが、全国の会員を対象に運動会の開催時期を調査しました。

この調査では、地方別に集計したことにより、地方ごとの傾向がはっきり表れています。
北海道では79%、東北では64%が春に開催。一方、甲信、東海、近畿、沖縄では5~7割が秋に開催しています。その他の地方では、春と秋がほぼ同じぐらいの割合です。

運動会の開催時期

この結果について、ウェザーニュースでは、

・昔から運動会は、農作物収穫後のタイミングでの開催が多かった。
・昭和38(1964)年開催の東京オリンピックは、高温多湿な真夏の東京で開催するのは、スポーツをする上で危険と判断し、時期をずらして、10月10日に開催日を決めた。その後、昭和40(1966)年に同日が国民の祝日として「体育の日」に定められたため、この前後に運動会を開催するようになった。
・秋と同じような気候で、晴れる日が多い5月にも運動会が行われるようになった。

と解説しています。

今と違って昔は、運動会は学校関係者だけでなく、地域ぐるみで行う行事であったため、その地域の基幹産業(多くは農業)の繁忙期(田植え、稲刈り等)を外して運動会が行われていました。
例外的に北海道では、梅雨がないかわりに、秋は天候が荒れる日が多いため、昔から春に運動会を行うことが慣例となっているようです。

しかし、そうなると、本州で田植えと梅雨の時期に重なる6月に運動会を開催するようになったことは、不思議に思われます。
これには、平成以降、運動会が地域の一大イベントではなくなったことが関係していると推測されます。
昔は地域の人が楽しみにして、早朝から我さきに観覧の場所とりをしたという運動会。それが近年、特に都市部では運動会に地域の人が参加することがあまり見られなくなってきました。

 

運動会を春に開催する理由

多くの小中学校で運動会を春に開催するようになったのは、以下に挙げた複数の理由のためと言われています。

・9月は残暑が厳しく、熱中症になりやすい。
・春に比べて、秋は台風などが発生しやすく、日程調整が難しい。
・一学期に行うことで、年度の早いうちに、新しいクラスの結束を高めるため。
・秋は遠足、修学旅行、文化祭、合唱コンクールなど行事が多いので、行事を分散化させるため。
・2学期制を導入した学校では、秋開催では成績表作りや期末試験に重なる。
・中学受験、高校受験など受験を控える子どもを、秋から勉強に専念させるため。

また、「地域の人たちが気軽に参加できる運動会」については、昨今の学校が「地域に開かれた学校」と「防犯対策」との狭間で難しい対応を迫られる一面もあることでしょう。

平成13(2001)年6月、大阪教育大学附属池田小学校で無差別殺傷事件が発生したことで、全国の小中学校が警備体制を強化しました。
その一環として、子どもたちの通学路の安全のため、「見守り隊」を組織するなどで、地域の大人たちが積極的に防犯に協力しています。

保護者の間にも、「不審者が立ち入らないように警備体制は万全であってほしい」と、「子どもたちの成長を多くの大人が見守ることができるように、運動会は地域に開かれたものであってほしい」という、相反する願いがあるのではないでしょうか。運動会に関わらず、校庭開放やさまざまな行事でも、この問題は首をもたげてくるもののように思えます。

運動会を地域に開放するかどうかは、地域の環境や学校長の方針によって、だいぶ違いがあると思いますが、子どもたちが全力で競技を行う姿を見ることで、多くの人が「元気」をもらえるはず。
オリンピックをテレビで観戦するのもいいですが、近所の子どもたちが運動会でがんばっている姿を、小さな子どもからお年寄りまで、みんなが応援できるようになるといいですね。

(参考)
ベネッセ教育総合研究所|1986年度 VOL.6-6運動会(全国調査)

待ちに待った運動会。当日のお弁当はどうしてる?|ベネッセ教育情報サイト

ウェザーニュース|各地で運動会開催!空も子供たちを応援♪

小学校運動会は5~6月開催がジョーシキ! 北海道の運動会事情 北海道ファンマガジン

小学校の運動会の日程は?春と秋の違いは?プログラムの傾向は? – こそだてハック

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