授乳の新ルール
2015.10.22
おっぱいは消毒しなくても大丈夫!
ちょっと前までは、授乳するとき、乳首を含めたおっぱい全体を清浄綿で拭くように指導されていました。
しかし、最近の研究により、母乳自体に殺菌作用があるので、おっぱいについている雑菌を心配する必要がないとわかりました。
むしろ、清浄綿で拭くことは、乳輪にある皮脂腺(モントゴメリー腺)から分泌される保護成分を取り去ることで摩擦や乾燥で乳頭が傷つき、かえって逆効果だということが判明したのです。
そんなわけで清浄綿での消毒は行われなくなりました。保健師もそのように指導しています。どうしても気になるようであれば、水で濡らしたガーゼで拭く程度で十分です。
便利な授乳用品
粉ミルクで使用する授乳用品もだいぶ様変わりしています。
昔は、哺乳ビンはグラグラ煮立った熱湯で煮沸消毒するのが主流でした。
今は、哺乳ビンをただ浸すだけで消毒できる消毒液や、電子レンジでスチーム消毒する専用容器などが販売されているので、昔よりもずっと簡単になっています。
また、昔はお湯を一度沸騰させて、人肌に冷ましてから粉ミルクを溶くという手順でしたが、今は「調乳ポット」といって、粉ミルクに最適の温度70度でお湯を保温しておける専用ポットがあります。これなどは夜間の授乳に便利なグッズですね。
授乳後に白湯を飲ませる?
昭和の時代、授乳が終わった後、赤ちゃんに白湯(さゆ)を飲ませるということが行われていました。
白湯とは、水道水を一度沸騰させてから、冷ました水(ぬるま湯)です。沸騰させて滅菌していますから、基本的には赤ちゃんに飲ませても安全な飲み物です。
しかし、赤ちゃんはそもそも味がない白湯を好みません。昔は、母乳や粉ミルクは糖分が多いので、特に歯が生えてからは、虫歯予防の観点から、口の中をすすぐためにも白湯を飲ませていたと思われます。
でも、母乳や適量の粉ミルクを飲ませていれば、赤ちゃんが水分不足になることはありません。
むしろ無理に白湯を飲ませると、腎臓に負担がかかると言われているのでご注意を。
授乳のTPO
昭和初期まで日本のママは人前でも割と平気で母乳を与えていました。ねんねこ姿のママが、抱っこする赤ちゃんにおっぱいを含ませる姿は、ごく普通の風景だったのです。まことに大らかな時代ですね。
その後、じいじ・ばあば世代が子育てをするようになった頃から、人前での授乳は減っていきました。今は公共施設や大きな商業施設に授乳室が設置されていることも多く、外でママが母乳を授乳する場面はほとんど見られなくなっています。
近年は授乳ケープ(授乳カバー)など、授乳する胸元をすっぽりおおうエプロンやポンチョが普及し、授乳中であることが一見してわからなくなったことで、外出先でも臨機応変に対応できるようになりました。
今や欧米各国でも公共の場での母乳での授乳に対しては、世間の風当たりがけっこう厳しいようです。
平成27(2015)年1月、アメリカの女性下着のチェーン店で、更衣室で授乳したいと申し出たお客に、店員が「店内では困るから、外に出て路地で授乳するように」と言ったことが記事になり、炎上しました。
同年2月には、デルタ航空のツイッターアカウントに、「機内で子どもに授乳カバーなしで授乳してよいか」とユーザーが尋ねたところ、「授乳カバーなしでの授乳はお断りします」と回答し、またまた大炎上。
日本でも、若いママタレントが外出先で歩きながら授乳したとSNSで報告した途端に、たちまち「母親として非常識」という声が上がり、やはり炎上騒ぎへと発展しています。
赤ちゃんは空腹を待てないものですが、授乳する姿をあまり見慣れない現代人にとっては、公共の場での母乳の授乳は「マナー違反」と受け止められるようです。
母子の安全や衛生上の理由のほかに、できれば授乳は他人の目につかない場所で行ってほしいというのが、いまどきの世間一般の意識なのかもしれません。
一方、海外では「授乳を行う権利」を法律で保障する国が増えています。
米国では50州中45州が、女性が公共の場で授乳する権利を法律で明文化。ヨーロッパでは英国やフランスなどもこの権利を法律で保障しています。アジアでは、2010年に台湾が同様の法律を施行しました。
日本は他の国に比べて比較的授乳室が普及していると言われていますが、まだまだ数が足りないという声も聞かれます。
今後、授乳室や授乳コーナーがおむつ交換台並みに普及していくことが望まれますね。
(参考)