むかしはね! いまはね! どうする? 子育てギャップ

ギャップが出やすい「おやつ」

2016.09.29

 

子育てギャップが出やすい、おやつ問題

じいじ・ばあば世代とパパ・ママ世代のもめごとで、最も問題となりやすいのが、「おやつ」「抱き癖」「食べ物の口移し」の3つ。
「抱き癖」と「食べ物の口移し」は、以前、本サイトでも取り上げました。

おやつについては、「家では子どもに甘いものを与えない方針なのに、じいじ・ばあばが勝手にあげるから困る」などの声をよく見かけます。

また、「子どもが1歳(または3歳)になるまで、甘いものを与えてはいけないと医者に言われた」という声があがっており、甘いものを子どもに解禁するのは、いつからにすべきかで悩むパパ・ママも多数いる模様。

こうした子どもの食と歯の健康に関する疑問に答えるため、平成24(2012)年2月、日本小児歯科学会、日本小児科学会のメンバーで構成する「小児科と小児歯科の保健検討委員会」では、「『子どもの間食』に関する考え方」を発表しました。

 

「おやつ」の正しいあげ方

「『子どもの間食』に関する考え方」では、「離乳を完了して3回の食事が栄養の主体になったときが、おやつを与え始める時期」としています。
つまり、おっぱいを飲んでいるうちは、おやつは必要ありません。

厚生労働省の平成22年度乳幼児身体発育調査によれば、離乳の完了月齢は平均14か月(1才2か月)ですから、そのくらいからおやつをスタートするのが適当でしょう。

では、最初におやつをあげるときには、どんなことに気をつければいいのでしょうか。

人間の味覚はママのお腹にいるときからかなり完成されていて、誕生後も発達し続けます。赤ちゃんは生まれてから数時間で苦味を嫌がり、甘味、うま味を好みます。

味を感じ取るのは舌や口の内側にある味蕾(みらい)という器官で、新生児は大人の1.3倍の数の味蕾をもっています。
つまり、赤ちゃんの方が大人よりも味に対して敏感なのです。

乳幼児期から濃い味、強い味を覚えてしまうと、味覚の発達が阻害されます。ですから、食事もおやつも薄味で食材の本来の味がわかるものを与えるのが望ましいのです。

一日3回の食事が規則正しくとられ、子どもの成長度合いに問題がなければ、特におやつをあげる必要はありません。しかし、1~2歳ぐらいでは、1回に食べられる量が限られるため、昼食から夕食にかけての間に栄養補給が必要になります。

○好ましいおやつ

1日に必要なエネルギー量の10~15%が目安
1~2歳児で100~150kcal、3歳児~就学前なら140~240kcal
・水分と果物、乳製品、いも類等を中心にする
・市販のお菓子を食べさせるときには、品質保持期限、成分表示(添加物、塩分、脂肪分など)に注意する

○おやつの組み合わせ適量例

[幼児期前期(1~2歳)]
・1日1回の場合・・・牛乳100ml70kcal+せんべい2枚53kcal=123kcal
・1日2回に分ける場合・・・
1回目 麦茶+幼児用ビスケット5枚37kcal=37kcal
2回目 牛乳100ml70kcal+バナナ1/2本40kcal=110kcal

○おやつのあげ方、ダメな例

・子どもと出かけるとき、必ずおやつを持ち歩く。
・「嫌いな野菜を食べたらケーキを買ってあげる」などと言う。
・電車や車の中で子どもをおとなしくさせるために何かを食べさせる。
・牛乳、イオン飲料、甘味飲料を水がわりに飲ませる。
・留守番、手伝いをした時に好きなお菓子をあげる。
・テーブルの上に食べ物を常に置いておく。

 

おやつのあげ方・世代比較

それでは、じいじ・ばあば世代とパパ・ママ世代では、どちらがおやつのあげ方により気を配っていたのでしょうか。

「おやつの与え方をどのようにしていますか」という質問に対し、日本小児保健協会が昭和55(1980)~平成22(2010)年度に行った幼児健康度調査と、厚生労働省の平成27(2015)年度乳幼児栄養調査の結果を組み合わせたのが、下記のグラフです(昭和55年度のみ2歳児の平均で参考データ)。

おやつの与え方

 

ここでは平成2年度と平成27年度を比較してみましょう。

「とくに気をつけていない」という保護者は、平成2年度28.4%、平成27年度9.1%
「時間を決めてあげることが多い」、平成2年度38.5%、平成27年度56.3%
「甘いものは少なくしている」、平成2年度26.7%、平成27年度22.9%
「欲しがるときにあげることが多い」、平成2年度21.2%、平成27年度20.7%
「甘いものに偏ってしまう」、平成2年度3.1%、平成27年度17.2%
「間食でも栄養に注意している」、平成2年度9.8%、平成27年度10.8%

じいじ・ばあば世代が子育てをしていた平成2年度は、おやつに関して「とくに気をつけていない」という割合が3割弱。それに対し、平成27年度のパパ・ママ世代は1割を切っています。

じいじ・ばあば世代は、今のパパ・ママ世代ほどおやつについてきっちり管理していなかったようです。これでは「子育てギャップ」が起こりやすいのも当然ですね。

ところで、「時間を決めてあげることが多い」「間食でも栄養に注意している」などは、パパ・ママ世代の割合が多いのですが、「甘いものに偏ってしまう」は、パパ・ママ世代はじいじ・ばあば世代の5倍以上!

文字通り“スイーツ”なパパ・ママが約2割存在するので、しつけに厳しいじいじ・ばあばともめる場面も多いと見られます。

参考までに、平成27年度乳幼児栄養調査の「子どもの間食(3食以外に食べるもの)として甘い飲み物やお菓子を1日にとる回数」を見てみましょう。

甘いものの回数

 

甘い飲み物やお菓子を1日にとる回数は、どの年齢も「1回」が最も多く、52.3~67.0%。「2回以上」の割合は、2歳~3歳未満が最も多く41.9%、5歳以上が最も少なく28.9%でした。

スーパーなどのお菓子売り場で、「お菓子買って!」と子どもがギャン泣きするというのは、比較的よく見かける光景です。
子どもに、「お菓子はダメ!」と毎回禁止するのは、パパ・ママにとって至難の業かもしれません。

でも、甘いお菓子や飲み物というのは、子どもにとって非常に嗜好性が高いので、一度味わってしまうと、また食べたいと必ず思ってしまうもの。大人にとってのアルコールやタバコと似たようなものなのです。

「甘いものを食べると太り過ぎたり、むし歯になったりするんだよ」と話しかけるなど、おやつの時間を最初の食育の機会ととらえ、子どもの心と体の栄養になるおやつを食べさせるようにしましょう。

 

(参考)
「子どもの間食」に関する考え方|小児科と小児歯科の保健検討委員会|日本小児歯科学会

日本小児保健協会「幼児健康度に関する継続的比較研究」

平成27年度 乳幼児栄養調査結果の概要 |厚生労働省

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