むかしはね! いまはね! どうする? 子育てギャップ

歯みがき

2016.03.17

 

子どもの虫歯が激減!

平成元(1989)年より、日本では「8020(ハチマル・ニイマル)運動」が進められています。これは、「高齢者(80歳)でも20本以上の歯があれば、食生活にほぼ満足することができる」という研究結果に基づき、国民全体に生涯にわたっての歯の健康を呼びかける厚生労働省と日本歯科医師会による運動です。

この運動が功を奏して、厚生労働省の調査によれば、3歳児の乳歯の虫歯は、昭和60(1985)年に1人平均2.9歯、有病者率56.2%であったのに対し、平成25(2013)年は1人平均0.6歯、有病者率17.9%に激減しています。30年前は2人に1人以上が虫歯の持ち主だったのが、今は5人に1人以下になっているのです。

昭和の時代、じいじ・ばあばが子どもの頃は、「乳歯は永久歯に生え変わるから、虫歯になっても平気」という考え方もあり、今ほど子どもに歯みがきをさせることにそれほど熱心ではありませんでした。
歯科での治療も麻酔をあまりしないので非常に痛く、治療する機械音が大きいなど、子どもにとって恐怖の対象であったため、歯医者に行かずに虫歯を放置して、自分でグラグラになった乳歯を抜くということも行われていたのです。

しかし、昔の子どもは歯をみがかなかったかといえば、そんなことはありません。大正2年(1913)年には小林富次郎商店(現・ライオン)からいち早く「ライオン子供歯みがき」が発売されています。昭和32(1957)年、ライオン歯みがき「新装こども煉(いちご、ばなな)」、昭和35(1960)年、サンスター歯みがき「まんがサンスターシオノギ、イチゴ・バナナ味」など、フルーツ味の子ども用歯みがきが続々と売り出されています。甘いフレーバーの歯みがきで、乳幼児に歯みがきの習慣を身につけさせるというのは、今でも普通に見られる光景です。

歯科医学の研究も進み、乳歯が虫歯になると、咀嚼する力が弱くなるため、あごの発達が悪くなったり、口内に虫歯菌が繁殖することで、乳歯の後に生える永久歯も虫歯になりやすくなったりなど、将来的に悪影響が及ぶことが次第にわかってきました。
そして、パパ・ママが子どもの頃に「8020運動」がスタートして、虫歯治療のたびに子どもが泣き叫ぶよりも、普段から歯みがきを習慣にした方がいいと大人が考えるようになり、乳歯のときから歯みがきをするようになったのです。

文部科学省が毎年行っている学校保健統計調査によると、虫歯は、幼稚園(5~6歳)では、じいじ・ばあば世代がもっとも多く88.90%の人がかかっていました。ついでパパ・ママ世代が83.86%子ども世代は両世代の半分以下、38.46%です。これが小学校、中学校、高校になると、パパ・ママ世代がもっとも多くなり、子ども世代がもっとも少ないという結果。それにしても、パパ・ママ世代が子どもの頃は9割以上が虫歯というのは、かなり深刻ですね……。

虫歯の世代間比較

「平成26年度学校保健統計調査」文部科学省より

 

いつから歯みがき開始?

赤ちゃんの歯は、かなり個人差がありますが、下の前歯(乳中切歯)2本が生後6~8か月で生え始めます。この歯は常に唾液の自浄作用で洗われるので、ほとんど虫歯にならないと言われています。それから、一般的に2歳9か月~3歳ぐらいまでに20本の乳歯が生えそろいます

歯みがきを始めるのは、上下4本の歯が生える頃が適当です。もちろん赤ちゃんは自分では歯をみがくことができないので、大人がかわりに行います。その際には、事前に手をよく洗い、赤ちゃんをあお向けに寝かせて、頭を大人の膝の上にのせるのが、もっともスタンダードな姿勢です。
最初から歯ブラシでみがくと赤ちゃんが嫌がるので、ガーゼを指に巻いて、やさしく歯の汚れを拭いてあげましょう。特に上唇の裏側には、ミルクのカスが溜まりやすいので、必ず拭き取る必要があります。慣れてきたら、だんだんに歯ブラシに移行します。

赤ちゃんの歯みがきのやり方

1.大人の膝の上に赤ちゃんの頭をのせて寝かせます。

2.小児用の歯ブラシを使い、ペンを持つように構えます。歯みがき剤は、自分でブクブクペッができるようになったら使いましょう。

3.上唇の裏側にある上唇小帯というすじ状の部分は、歯ブラシが当たると痛みを感じるので、左手の人差し指を横にして当てて、歯ブラシがぶつからないようにカバーしましょう。

4.大人の歯のようにゴシゴシみがくのは禁物です。できるだけソフトに短時間で行うこと。目安は1本5秒ぐらい。しっかりみがくことより、声をかけたり、歌を歌ったりして、楽しい雰囲気で行うことを優先させましょう。

5.歯みがきに慣れるまでは、赤ちゃんが機嫌のよい時間帯に歯みがきします。ただし、虫歯菌が繁殖するのは夜間なので、寝る前には必ず歯みがきすることを習慣づけましょう。

現在、各市町村で1歳6か月児と3歳児に対して行われる「乳幼児健康診査」の項目の1つとして「歯科健診」も実施されています。しかし、1歳6か月の健診ではそれほど虫歯が見られないのに、3歳の健診で虫歯が急増していることから、その対策として、2歳時に歯科健診を行うところが増えています。

近年は、乳幼児が虫歯にならないようにするには、歯みがきと同時に食生活にも気をつけるべきという考え方になっています。ジュースなど糖分が入った飲み物を哺乳ビンで飲ませていると、あっという間に虫歯になってしまいます。

糖分の入った飲み物や菓子類を避け、おやつは時間や回数を決めるなど、孫に文字どおり甘~くなりがちなじいじ・ばあばは、特に気をつけるようにしましょう。

また、大人とスプーンや箸などを共有したり、口移しで食べ物を与えると、口中のミュータンス菌(虫歯菌)やピロリ菌を子どもに感染させるので、絶対に行わないようにしましょう

(参考)
歯の健康|厚生労働省

全国乳幼児歯科健診結果 国立医療保健科学院・歯っとサイト

平成26 年度学校保健統計調査(確定値)の公表について|文部科学省

一般社団法人日本小児歯科学会

子どもの歯科健診 ― 歯の豆知識! – 歯医者さん ネット

まぼろしチャンネル 日本こども歯磨き年表

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