迷子紐(リード、ハーネス)
2016.04.07
迷子紐とは
子どもがようやく歩けるようになって、一緒に外出するようになると、思った以上にヒヤリ・ハットが多いものです。
しっかり手をつないでいても、手を振り払って道路に飛び出したり、ちょっと目を離した隙に走り出して、そのまま迷子になったり……。片時も目を離せなくなるのが、第一次反抗期である2歳前後のイヤイヤ期。
この時期を中心とする子どもの事故を防ぐために、迷子紐が使われています。
迷子紐は、赤ちゃん用ハーネス、幼児用リードなどともいわれ、子どもの胴体や腕、リュックサックなどに装着し、紐の片側を保護者がしっかり持って、子どもの動きをコントロールするもの。
犬の散歩のときに飼い主が手にするリードと似ているので、「まるで犬と同じ扱い」と否定的な見方をする人も少なくないようですね。
平成26(2014)年に、テレビの情報番組で子ども用の迷子紐を取り上げたところ、司会者が「奴隷制度を思い出した」とコメントして話題になりました。
人間に紐をつけて動きを拘束するというイメージから先の発言になったと予想されますが、現役の子育て世代を中心とする視聴者から、「今の時代の子育ての大変さを理解していない」と猛反発を受けました。
欧米では子ども用の迷子紐は昔から使われています。
アメリカには、「ウォーク・オー・ロング」という乳幼児歩行サポート器具があります。よちよち歩きの子どもが不用意に転ばないように上から支えるもので、成長してからも、自転車やスケートの練習にも使えるので、子育て世代にはおなじみの道具です。こうした習慣から、子どもに迷子紐をつけることに関して、日本ほど抵抗感はないようです。
国内でも最初は輸入品から普及し、10年ほど前から国内メーカー数社が製造に乗り出しました。
迷子紐への世間の反応
現在使われている迷子紐は、犬のリードのように首につなぐものではなく、胴体に装着したり、リュックサックとして背負ったりするものが主流です。リュック状の迷子紐は、ぬいぐるみや羽根などがついていて、一見して迷子紐と気づかせない形状となっています。
逆にとらえれば、「迷子紐をつけている」と周囲に気づかせたくないママがそれだけ多いということで、いかに周りの目を気にして子育てしているかがわかりますね。
「奴隷制度」発言を受けてのネットの反応として、「自信を持って使おう!子供用ハーネスに対する無責任な偏見に負けないで」という記事では、「外出先でハーネスを使っていたら『ペットじゃないんだから』『かわいそう』と心ない言葉を浴びせられた」、「『そんなものに頼らないできちんとしつけなさい』というお説教も耳にします」などの実例が紹介され、「これらは、育児を実際に経験していない人、あるいは子供がいても、大人しくておっとりした、とても育てやすい性格だった人の意見ではないでしょうか」と分析しています。
どうやら迷子紐を通して、「子育てギャップ」が噴出している模様。
朝日新聞デジタルの平成27(2015)年6月4日の記事「幼児用リード、じわり浸透 安心?それとも違和感?」によると、警察庁の統計では、幼児の歩行中の交通事故は、平成25(2013)年は2332件。発生状況としては「遊びの最中」が19%で最も多く、「買い物」18%、「出かける途中」10%と続きます。
この結果について、公益財団法人交通事故総合分析センターは「一緒にいた大人が目を離したすきに飛び出した事故が多いとみられる」とコメントしています。
子どもの事故に詳しい緑園こどもクリニック(横浜市)の山中龍宏医師は「1~3歳の幼児は前後を見ず興味のある方へ走り出す。2歳ごろは手をつなぐのを嫌がる子も多い」として、「リードを使うかどうかは親の価値観で決めればいい」と話しています。
この記事に対する反響として、「留学中の米国でリードを知り、25年前に通販で取り寄せた」(57歳女性)、「リードは登山の命綱と似ている。街は山より危険が多い。愛情で結ばれていると思ったらいかがですか」(67歳男性)という声が寄せられたそう。じいじ・ばあば世代はみんながみんな、迷子紐の反対派というわけではないようです。
迷子紐に対して一部の人たちが眉をひそめるのは、子どもが走ろうとしたときに、強く紐を引っ張って引き戻したり、紐を長く伸ばしたままで遊ばせ、大人がスマホに夢中になったりなど、間違った使い方を目撃したことがあるからでは?
迷子紐は予測不能な事態から守る補助ツールであって、子どもの急な動きに対応できるように、手をつなぐ、もしくは手が届く距離を保つことが大切です。
子ども自身が自制心を身につけ、危険から身を守ることができるようになるまで、パパ・ママ、じいじ・ばあばは、何度も言葉と行動を通して伝えていく。そのなかで、エアバッグやチャイルドシートなど安全装置のひとつとして、迷子紐をとらえてみてはいかがでしょうか。