むかしはね! いまはね! どうする? 子育てギャップ

たばこの害

2015.10.01

 

ホタル族の出現

近年はどこでも禁煙・分煙が当たり前。喫煙率も年々下がる一方です。

昔は赤ちゃんのパパ・ママがたばこを喫うことに関して、医療関係者以外、それほど神経質ではありませんでした。

妊娠中に禁煙しても、子どもが生まれた後で再びたばこを喫い始める人も多く、受動喫煙による健康被害はあまり知られていなかったのです。

しかし、たばこの吸い殻を誤って子どもが口にする誤飲事故が相次ぎ、たばこに含まれるニコチンの毒性も世の中に広く知れ渡るようになりました。

昭和62(1987)年、厚生省(現・厚生労働省)公衆衛生審議会が「喫煙と健康問題に関する報告書(たばこ白書)」を発表し、たばこの有害性を明らかにしました。

昭和63(1988)年には、WHO(世界保健機関)が、毎年5月31日を「世界禁煙デー」と定めました。この年以降、世界各国で禁煙運動が盛んになっていったのです。

世界的な趨勢を受け、この頃、日本では同室の妊婦や赤ちゃんから煙を遠ざけるため、あるいは家族に高まる嫌煙ムードに応えるべく、ベランダに出てたばこを吸うパパたちが登場し、それを「ホタル族」と呼ぶようになりました。

夜になると高層マンションの各階で、ホタル族が吸うタバコの火が、あちこちで浮かんでは消え、消えては浮かび、小さな光を放っていたといいます。
 

ますます肩身が狭くなった喫煙者

平成12(2000)年、厚生省(現・厚生労働省)は「健康日本21」(21世紀における国民健康づくり運動)を策定し、喫煙規制対策を積極的に推進しています。

近年は研究により、家族がたばこを吸うことによる受動喫煙で、おなかの中にいる頃も含めて、赤ちゃんの発育が阻害される、喘息など呼吸器系の病気を引き起こす、SIDS(乳幼児突然死症候群)になる可能性が約4倍になる、などの深刻な影響が報告されています。

「ベランダや換気扇の下で吸えば大丈夫」と思っている人も多いですが、それは間違いです。
ベランダから戻った時点で、喫煙者が吐く息や着ている衣服を通して有害物質がまき散らされ、換気扇を回していても、煙はすぐに部屋中に広がってしまいます。

また、平成24(2012)年にはベランダ喫煙が近隣の住人から訴えられ、賠償金を支払う判決が出ています。今やホタル族も世間から厳しい目が向けられるようになりました。

空気清浄機があればたばこの煙や臭いが気にならなくなるため、つい安心しがちですが、空気清浄機では一酸化炭素などのガス状物質は除去できないので、これも過信はできません。

さらに、厚生労働省の調査によれば、子どもの誤飲事故でもっとも多いのが、34年連続で「たばこ」です。

大切な赤ちゃんの健康を考えると、家族全員が「禁煙」することがイチバン、ということになりますね。

(追補)

平成21(2009)年より、「三次喫煙(thirdhand smoke)」の被害が問題視されるようになりました。「三次喫煙」とは、アメリカのダナ・ファーバー癌研究所によって作られた造語です。喫煙者がタバコを喫い込む「一次喫煙」(firsthand smoke)、喫煙者が吐き出した煙やタバコの先から立ち上る煙などが他人に吸入される「二次喫煙」(secondhand smoke)に対し、「三次喫煙」とはタバコを消した後も残留物の影響で健康被害を受けることを指します。

喫煙者の部屋は壁やカーテンなどが変色したり、特有のにおいがしたりしますよね。ああした環境の変化が残留物による影響そのもので、室内、車の中、衣服などについた残留物ニコチンが、大気中の亜硫酸と反応すると、発がん性物質ニトロソアミンが作られます。

受動喫煙(二次喫煙)に比べると、三次喫煙の影響については、まだ広く知られていないのですが、ダナ・ファーバー癌研究所は「三次喫煙の影響を受けやすいのは乳幼児」と警告しています。なぜなら、小さい子どもは大人に比べて呼吸速度が速く、ハイハイなどで床やカーペットに接触することが多いため、大人より三次喫煙の被害を直接受けやすいのです。

子育てにかかわる人は、ぜひこのことを知っておきたいですね。

(参考)

厚生労働省「平成24年度家庭用品等に係る健康被害病院モニター報告」

三次喫煙 e-ヘルスネット 情報提供

三次喫煙 – Wikipedia

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