むかしはね! いまはね! どうする? 子育てギャップ

食物アレルギー

2015.12.24

 

卵、牛乳、果汁

昭和初期には、赤ちゃんの離乳食として卵、牛乳、果汁などが推奨されていました

これらは確かに栄養豊富な食材ですが、離乳食とするにはさまざまな問題点が指摘されています。

日本では過去50年間で食物アレルギーの人が増えており、その原因として、卵や乳製品などの摂取量の増加食品の多様化などがあげられています。

食物アレルギーは、特定の食品を身体に取り込んだとき、その食品に含まれるアレルゲン(主にタンパク質)に身体の免疫システムが反応することで発症します。子どもの消化器官は大人に比べて未熟なため、食物アレルギーは乳幼児期に発症することが多く、乳児の約10%幼児の約5%何らかの食物アレルギーをもっていると言われています。

主な症状としては、湿疹、じんましんなど皮膚症状がもっとも多く、そのほか全身に症状が起こります。症状が重い場合はショック状態(アナフィラキシー)で死亡することもあります。

食物アレルギーの症状

食物アレルギーの症状

特にアレルギーを起こしやすいのが卵、牛乳、小麦粉。この3つは「3大アレルゲン」と呼ばれ、全体の約60%を占めます。

0歳児の場合、食物アレルギーになる原因の約6割(56.5%)が「卵」。次が「牛乳」で25.6%、3番目が「小麦」で13.1%です(「食物アレルギーの診療の手引き2014」より)。

食物アレルギー

卵アレルギーになると、アイスクリーム、クッキー、ケーキ、マヨネーズなど卵を使った食品すべてが食べられなくなります。卵および卵を使った食品を食べさせるのはなるべく遅く、7か月以降を目安にしましょう。特にアトピーなどアレルギー症状が見られる場合は、アレルギー検査をして、1才を過ぎてからが望ましいと言われています。

とはいえ、食物アレルギーの発症を心配して離乳食の開始を遅らせる必要はありません
赤ちゃんの食物アレルギーは、腸管の免疫システムが発達することで、3才頃までに自然と治る場合も多いので、小児科の先生と相談しながら、これらの食材を食べさせる時期を決定しましょう。

 

ハチミツ、黒砂糖、牛乳もダメ

昭和の時代のベストセラー『スポック博士の育児書』では、最初の版で、離乳食としてハチミツを推奨していました。

しかし、昭和52~53(1977~1978)年、アメリカで生のハチミツを与えた赤ちゃんが多数死亡した「乳児ボツリヌス症事件」をきっかけに、離乳食にハチミツを使うことは厳禁となったのです。この後、『スポック博士の育児書』は内容を改定しました。

ハチミツにはボツリヌス菌の芽胞(胞子)が含まれていることがあり、乳児に加熱していない生のハチミツを与えると、ボツリヌス菌の毒素が腸管を通して全身に回って、大変危険な症状となるのです。

日本では昭和61(1986)年頃に輸入ハチミツが原因で乳児ボツリヌス症が発生しました。
その後、厚生労働省は1才以下の子どもにハチミツを与えないように指導しています。同じ理由で、黒砂糖も1才になるまで与えてはいけません

また、『スポック博士の育児書』の初版では、「不足しがちなカルシウムを摂取させるために、乳幼児には毎日牛乳を与えなければいけない」とされていました。
ところが、牛乳の鉄分は体内での吸収率が悪く、牛乳のたんぱく質やカルシウムは赤ちゃんの未熟な消化器官には負担が大きく、ひどい場合には腸管出血を引き起こすことがその後判明しています

平成8(1996)年、厚生省(現・厚生労働省)は『改訂離乳食の基本(新)』で、「1歳以下の乳児には牛乳を与えない」と指導しています。

じいじ・ばあば世代が子育てしていた頃、当たり前のように赤ちゃんに与えていた卵、牛乳、ハチミツですが、今はあまり早い時期に与えてはいけない食品の筆頭となっています。
過去の常識にとらわれず、今明らかになっている健康情報をもとに、子どもに何を与えるべきか、しっかり自分で判断する冷静な態度が子育てに携わるすべての人に求められます。

(参考)

厚生労働科学研究班による「食物アレルギーの診療の手引き2014」

アレルギーラボ

『子育ての常識・非常識 どっちが正しいの!? 育児の世代対抗戦』
保健同人社電話相談室 (著)、高橋悦二郎 (監修)、保健同人社

『子育てハッピーアドバイス 初孫』
明橋大二 (著)、吉崎達郎 (著)、1万年堂出版

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