日光浴とくる病
2015.09.24
くる病予防のための日光浴
じいじばあばが子育てをしていた頃は、天気のいい日は必ず赤ちゃんを裸にして、日光浴をさせていました。
これはビタミンD欠乏による「くる病」を防ぐ目的で、年間を通じて行われていました。
「くる病」とは足などの骨がまがって変形し、重症化すると歩行困難になる病気です。
この病気予防に欠かせないのが、ビタミンD。
ビタミンDは骨にカルシウムやミネラルを沈着させる働きがあり、骨の成長に欠かせない栄養素で、魚や卵黄に多く含まれます。
日本では戦後の栄養状態が悪い時期に「くる病」の患者が多く発生しました。
そこで、ビタミンDを多く含む肝油ドロップが開発され、子どもたちに食べさせるなど、食糧事情を改善した結果、患者数が年々減少していったのです。
また、日光に当たることで、皮膚でビタミンDが作られることがわかり、積極的に赤ちゃんに日光浴を行うことが奨励されました。
このため、昭和の子育てにおいては、日光浴が欠かせなかったのです。
しかし、その後の医学研究により、晴れた日には日なたで15分程度、日陰で30分程度、服を着たままでも、顔や手足に日光が当たれば、血液中にビタミンDを形成するのに十分とわかってきました。
適度に外気浴させましょう
今はビタミンD不足を気にするより、紫外線による健康への悪影響の方が問題視されています。
紫外線は皮膚の老化や腫瘍、白内障などの原因となるため、外出時には赤ちゃん用の日焼け止めクリームを塗り、日傘、帽子、サングラスなどで完全武装させるパパママも多く見かけるようになりました。
そうした様子を見かねて、じいじばあばが「少しは日光浴をさせないと、子どもが元気に育たないから」と言って、室内の日当たりのよい場所で遊ばせようとするかもしれません。
「日光浴なんて、もう時代遅れ!」と言って、あわてて赤ちゃんを日陰に移動させようとするパパママ。
でも、じいじばあばの主張が必ずしも時代遅れとは言えない状況になっていることをご存じでしょうか……。
過去の病気と思われていた「くる病」が、20年ほど前から再び増えてきているのです。その原因となっているのが「完全母乳育児」、「アレルギー除去」、「赤ちゃんへのUV対策(日光浴不足)」。
母乳は赤ちゃんにとってメリットの多い食物ですが、唯一ビタミンDだけが粉ミルクに比べて少ないのです。
また、食物アレルギーを心配するあまり、ビタミンDが豊富な食材である卵や魚などを食べさせないことも、赤ちゃんのビタミンD欠乏の一因となっています。
さらに、紫外線の影響を心配して、赤ちゃんをまったく日光に当てないことも「くる病」が増加した一因と言われています。
「くる病」になると、背が伸びにくくなるので、子どもの身長の伸びが極端に止まったときは、要注意。
「完全母乳育児」、「アレルギー除去」、「赤ちゃんへのUV対策(日光浴不足)」は近年の子育てでは主流派の考え方ですが、そこに思いがけない落とし穴があります。
紫外線対策も大切ですが、完全母乳育児の場合などは特に、外気浴から始めて、散歩に毎日出かけるなどで、子どもがビタミンD不足にならないように気をつけましょう。
(参考)
『子育ての常識・非常識』保健同人社電話相談室:著 監修:高橋悦二郎 保健同人社
『団塊世代の孫育てのススメ ―イマドキの子育て事情とパパママのサポートのコツ』宮本まき子:著 中央法規出版