子ども部屋? リビング学習?
2016.06.02
子ども部屋
子どもにしっかり学力をつけさせるためには、勉強することが新鮮で楽しいと思えるうちに、予習・復習など家庭学習の習慣を身に付けさせることが大事。そのためには、なるべく早めに家の中に子どもの勉強場所を用意しておく方がよいのです。
昭和20年代頃までは、書斎や座机の他、ちゃぶ台、こたつなどを利用して家庭学習をさせていました。戦後しばらくまで、家の中に子ども部屋がある家庭はそれほど多くありませんでした。
日本にはじめて子ども用の学習机が登場したのは、昭和37(1962)年のこと。イトーキよりスチール製学習机「イトーキジュニアデスク」が発売されました。子どもの成長に合わせて高さを調節できる学習机は、ベビーブーム以降の子どものための必需品として急速に普及しました。
同じ年に、昭和曲木工場(現マルニ)が木製二段ベッドを発売し、これも大ヒット。布団を敷くよりも省スペースということで、この年以降、日本中の子ども部屋に学習机と二段ベッドが普及していったのです。
それはちょうど、じいじ・ばあば世代が子どもの頃で、子ども部屋をきょうだいで共有し、学習机を二つ並べて、二段ベッドを置くというのがスタンダードでした。兄と妹、姉と弟など性が異なる場合などは特に、一つの部屋をカーテンで仕切るなどの工夫がとられたものです。
これがパパ・ママ世代になると、一人っ子の方が多く、子ども部屋としてドアに鍵がかけられる個室が与えられるようになりました。
独立した子ども部屋があることで、子どもに自立心を身につけさせ、勉強に集中させることが期待されたわけですが、成長の度合いには個人差があり、誰もが順調に親離れできたわけではありませんでした。
ちょうどこの頃から、家庭内暴力、不登校、引きこもりなどが社会問題として噴出するようになったのです。
それでもインターネットが普及するまでは、子ども部屋にいる限り、他人の悪意や暴力からは子どもが守られていたといえるでしょう。
ところが、今はインターネットと携帯電話により、安全なシェルターとしての機能を子ども部屋が果たせなくなってしまいました。
日本で一般家庭にインターネットや携帯電話が普及し始めたのは、平成7(1995)年頃。そして、子どもに携帯電話を持たせるようになったのは、平成15(2003)年頃です。当時は保護者が携帯電話のおさがりを子どもに持たせて、主に塾や習い事の帰りの連絡のために利用していました。
それがやがて、出会い系サイトでの売春や援助交際、学校裏サイトにおけるいじめや誹謗中傷など、インターネットがらみの犯罪や事件に、多くの子どもが巻き込まれる事態となったのです。
犯罪や事件だけでなく、勉強そっちのけでゲームやSNSをするなど、深刻なネット依存に陥る子どもも増加しました。
インターネットがなかった時代と違い、大人の目が行き届かない個室を子どもに与えるのは、今や多くの危険が伴います。それも子どもが被害者になる場合だけでなく、残念ながら加害者になる場合もあり、多くの親は事件が発覚するまで気づかないことが多いのです。
フィルタリングソフトをパソコンや携帯電話に入れるという対処方法もありますが、100%有効というわけではなく、年々フィルタリングの使用率は減少しているのが実状です。
それでは、平成の今、子どもたちはいったいどこで勉強すればよいのでしょうか。
リビング学習
近年、子どもが家で勉強するときは、子ども部屋ではなく、家族が集まるリビングを使わせる家庭が多くなっています。
「リビング学習」と呼ばれ、小学館の家庭教育雑誌『edu』2014年1月号(現在休刊)でも特集が組まれました。
「リビング学習」が広がるきっかけとなったのは、平成22(2010)年1月に放送されたテレビ東京の番組「ザ・逆流リサーチャーズ 東大生の子供時代に逆流スペシャル!」です。
東大生にアンケート調査を行い、勉強方法や習い事、遊び場などを聞いたところ、「子どもの頃、勉強していた場所」を「リビング」と答えた割合が48%に上ったそう。放送後、「東大に行く子はリビング学習をしている」という話が広がり、たちまちのうちに「リビング学習」が流行しました。
ベネッセ教育総合研究所が平成26(2014)年2~3月に行った「小中学生の学びに関する実態調査」によると、学校の授業以外でよく勉強する場所は、小・中学生ともにもっとも多かったのが、「自分の家のリビングルーム(家族で過ごす部屋)」(小学生:84.3%、中学生:68.7%)。ついで、「自分の部屋」(小学生:48.1%、中学生:66.6%)、「塾の自習室」(小学生:10.9%、中学生:17.8%)でした(複数回答)。
今や小学生の8割、中学生の7割がリビング学習を行っているという結果で、こうした時代の流れを受けて、「リビング学習机」や「リビング学習仕様の住宅」などが家具や住宅メーカーから続々と発売されています。
約10年前までは、小学校の入学準備として、学習机を買う家庭が多かったのですが、近年はダイニングテーブルで勉強するため、学習机ではなく、リビングにランドセルや勉強道具を置くための収納棚やラックを購入する例が多くなってきているのだとか。
とはいえ、言うまでもないことですが、「リビング学習」をしさえすれば、子どもが有名大学に進学できるわけではありません。
ここでリビング学習のメリット、デメリットを知っておきましょう。
○メリット
・子どもの勉強を親が見てあげやすい。
・親に見守られていることで、安心感と緊張感がある。
・適度な雑音があることで、勉強に集中しやすい。
・親子のコミュニケーションが取りやすい。
○デメリット
・親が口出ししすぎて、子どものやる気を削ぎやすい。
・ダイニングテーブルで勉強する場合、準備や後片付けに手間どる。
・勉強をジャマする要素が多い(きょうだい、テレビ、ペット、遊び道具、遅く帰宅した親など)。
小学生とはいえ、まだ精神的に幼いうちは、子ども部屋に一人でいると、どうも不安だとか寂しいと感じ、勉強に集中できない子どもも多いようです。リビング学習だと、すぐそばに家族がいることを心強く思い、ひとの話し声や家事の雑音などが聞こえても、それでかえって勉強に集中できるのだそう。
昭和の子育てでは「子ども部屋」が必須と思われていましたが、どうやら平成の子育ては「子ども部屋」より「リビング学習」に軍配が上がるようです。
そこで重視したいのは、リビングが、人間工学的に子どもの勉強に適した環境かどうかという点です。
リビング全体が明るく照らされている場合は問題ないのですが、ダウンライトや間接照明などで、全体的に暗かったり、明るさにムラがあったりすると、勉強する場所としては不適格です。この場合、手元に卓上ライトを置くなどで調節する必要があります。
また、ダイニングテーブルで勉強する場合、天板の高さがひじと同じか少し低めでないと、子どもの手や肩に負担がかかり、ひじつきや猫背になるなど姿勢が悪くなる原因になります。
ダイニングチェアも、子どもの足が床面につかず、ブラブラしたままの状態だと、落ち着いて勉強できません。足元にクッションや座椅子を置いて調整するなど、子どもが正しい姿勢で勉強できるように目を配りましょう。
寝具の歴史⑩昭和(1926年~1989年) -2- 福トピ 家具の福屋