学校のトイレ
2016.07.14
学校のトイレでうんちをできない理由
小学校のトイレで大便をして、友だちにからかわれたことがありませんか? そういう体験がPTSDとなり、多くの人が長じて便秘症となっている……そんな仮説を立ててみました。
いやいや冗談ではなく、まじめな話。最近の調査で、小学校のトイレでうんちをして、「友達にからかわれたことがある」子どもが18%という結果が出ているのですから。
平成28(2016)年3月11日~30日、NPO法人日本トイレ研究所は、全国47都道府県の小学生4,833名の保護者を対象に、インターネットにより、「小学生の排便と生活習慣に関する調査」を実施しました。
この調査によると、小学生の2 人に1 人(49.7%)が学校でうんちを「ほとんどしない」、または「まったくしない」と回答しています。
学校でうんちをガマンした経験について、「よくある」「ときどきある」という回答が52.8%。
学校でうんちをしにくい理由の第1位は「友達に知られたくないから」(55.9%)。
「学校でうんちをしたことで、友達にからかわれることはありますか」という質問では、「よくある」(1.8%)「ときどきある」(16.2%)で、合計すると18.0%の子どもが学校でうんちをしたことでからかわれた経験があることがわかりました。
うんちをするのは、誰もが有する基本的な権利です。それが侵害されるというのは、もはや重大な「いじめ」に他なりません。
しかし、残念ながら昭和の時代から、こうした陰湿ないじめが学校でみられてきました。
誰かがトイレで大をすると、「エンガチョ」と言って指をさしたり、トイレの個室のドアを開けられなくして閉じ込めたり……。子どもというのはときに残酷なことを平気で行ってしまうものです。
そのため、学校でうんちがしやすいと感じている子どもは、全体の24.6%で、4人のうち3人が学校ではうんちがしにくいと思っているのです。
昔も今も、学校でうんちをもらす子がいますよね。そうした背景に、「友達にからかわれるのがいやだから」という心理が働いたのだと思うと、なんとも胸が痛みます。
さらに、この調査では、平成18(2006 )年に発表された慢性機能性便秘症の国際的診断基準である※「ROME=Ⅲ基準」に照らし合わせると、「小学生の5人に1人(20.2%)が便秘状態」という結果でした。
※ROME=Ⅲ基準
下記条件のうち2 つ以上に合致する人を「便秘状態にある」と定義する。
・排便頻度が3 日に1 回以下
・便失禁がある
・便を我慢することがある
・排便時に痛みがある
・便が硬い
・トイレが詰まるくらい大きな便が出る
トイレが詰まるくらい大きな便って、どれほどの量なんだとお思いでしょうが、意外と女子中学生のいる家庭では、よくトイレが詰まるのだそうです。
近年は「腸活」という言葉が流行し、腸内環境を整えることで精神状態もよくなるなど、人間の身体的・精神的な健康が正常な排便習慣によって培われていることが判明しています。
国も教育現場も、可及的速やかに、子どもたちが「学校でうんちをする権利」を確立する必要がある。ほんと、声を大にしてそう訴えたい!!
進む学校トイレの洋式化
平成27(2015)年6月、小林製薬では全国の小学生がいる母親と一緒に答えてもらう子ども(1~6年生男女、サンプル数412)を対象に、「小学生のトイレ実態」に関するWEBアンケートを実施しました。
小学校のトイレは、平成22(2010)年は和式が約8割でしたが、平成27(2015)年は約5割にまで減少しています。
この調査では、約4割の子どもたちが「小学校の和式トイレで困った経験がある」と回答。いまや家庭用トイレはほとんどが洋式であるため、和式では「うまくおしっこやうんちができない」や「しゃがめない」、「どうやって使うのかわからなかった」などの声があがっています。
そのため、約7割の保護者が子どもの小学校入学前に、和式のトイレ・トレーニングを実施したと答えています。
百貨店やショッピングモールなどの「商業施設」や、駅や公園・図書館などの「公共施設」のトイレで、子どもたちに和式トイレの使い方を教えていました。
この結果を受けて、小林製薬では、小学校入学前の子どもには「小1の壁」とともに、「和式トイレの壁」も立ちはだかっていると分析。「正しい排便意識の啓発とともに、早急なトイレ環境の改善が求められます」と結んでいます。
そして、小林製薬では、社会貢献活動として、平成22(2010)年より「小学校に洋式トイレプレゼント!」(旧「トイレぴかぴか計画」)を実施。洋式トイレが設置されることで、子どもたちからは、「トイレにまつわるからかいが減った」「うんちをガマンしなくなった」などの意識の変化がみられたそう。
ちなみに国内のトイレのトップシェアメーカーであるTOTOの商品出荷率は、1960年代は和式が約8割でしたが、昭和51(1976)年に和式、洋式が半々になり、1980年代後半には洋式が約8割に。その後、2000年代に入ると9割以上が洋式になりました。現在は住宅の新築・改修ではほぼ100%が洋式なのだそう。
一般家庭や公共施設のトイレが和式汲み取り、和式水洗、洋式水洗、温水洗浄便座というように進化を遂げていくなかで、なかなか改善が進まなかった小学校のトイレ。
怪談「トイレの花子さん」に代表されるように、子どもたちにとって、学校のトイレは「5K(臭い・汚い・怖い・暗い・壊れている)」と言われ、あまり居心地のいい場所ではありませんでした。
今後は学校のトイレが新しく改修されることで、友達にからかわれることなく、安心してじっくりと落ち着いてうんちができるようになるはず。
子どもたちの健康のために、できるだけ早く全国の学校のトイレの改修が進むことを期待しています。
(参考)
NPO法人日本トイレ研究所「小学生の排便と生活習慣に関する調査」