むかしはね! いまはね! どうする? 子育てギャップ

ベビーフード 利用の留意点

2016.09.15

 

離乳食を作るのは面倒?

赤ちゃんが5~6か月になったら、そろそろ離乳を開始する時期。大人が食事しているのをじーっと興味津々で見るようになり、食卓に並んだお皿に手を伸ばしてくることもあるようです。
早い子だと歯が生え始め、ママのおっぱいをときどき噛むようになるから、離乳を開始するパターンも多いそう。

でも、離乳食って、材料の重さを測って、柔らかくゆでたり、すりつぶしたり、裏ごししたり。月齢によって内容を変えていかなければならないので、けっこう手間がかかりますよね。

厚生労働省が行った平成27(2015)年度「乳幼児栄養調査」によれば、「離乳食について困ったこと」(回答者:0~2歳児の保護者3,871人)として、最も多くあがったのが、「作るのが負担、大変」33.5%でした。

離乳食について困ったことは、「特にない」と回答した人は25.9%で、4人に3人の保護者が離乳食について何らかの悩みを抱えているという結果です。

離乳食で困ったこと

「離乳食を作るのが大変! どうにか簡単にできない?」とお困りのパパ・ママにとって、救いの主となるのがベビーフード。

日本でベビーフードはいつ頃誕生したのでしょうか。

 

ベビーフードの第一号

日本で最初のベビーフードは、昭和12(1937)年に和光堂より発売された、缶詰の「グリスメール」です。
一定の大きさに細かく砕いた白米を水や野菜スープ、牛乳などに浸してから柔らかく煮たもので、小児栄養学の権威であった太田孝之博士の提唱により作られました。

当時の乳幼児死亡率は出生数1000人に対して106.8人で、10人に1人の割合で亡くなっていたのです。死亡原因は肺炎などの病気のほか、栄養不良、消化不良、細菌性疾患などで、赤ちゃんのために栄養価が高く、衛生的な食品を供給することが急ぎ求められていました。

そうした社会的な要請で生まれたのが、日本初のベビーフード「グリスメール」です。保存が利き、栄養価が高く、消化によいということで、先進的な家庭に受け入れられました。

そして、昭和25(1950)年以降、第一次ベビーブームの到来に合わせて、現在のベビーフードに近いものが登場します。
武田薬品、森永乳業などから続々と新製品が出されましたが、まだ一般家庭にベビーフードを使う習慣が根付いていなかったため、なかなか普及には至りませんでした。

昭和46(1971)~49(1974)年の第二次ベビーブームとともに、ベビーフードのラインナップが一気に広がります
昭和43(1968)年に明治乳業から「粉末果汁」、和光堂から「米がゆ」が発売され、乾燥タイプのベビーフードの品目が増加。瓶詰のべビーフードもバリエーションが増えていく一方、「缶詰」のベビーフードは次第に姿を消していきました。

しかし、当時の母親たち(団塊世代)は、ベビーフードを一度は使ってみても、「自分の手作りのものをあげたい」「新鮮な材料で作ってあげたい」「原料・成分が不安」などの理由で、繰り返し使うことはなかったようです。

こうした意識に変化が訪れるのは、女性の社会進出が顕著になった1980年代以降。
核家族化と共働き世帯の増加により、手の混んだ調理をする家庭が少なくなりました。外食やスーパーの惣菜の利用が増え、煮物などの和食中心であった食事内容が、肉や生野菜中心になったため、親の食事と離乳食を同時に作ることが昔よりやや困難になったのです。
このため、団塊世代の下の世代(いわゆるしらけ世代)からは、ベビーフードを積極的に取り入れるようになりました。

その後ベビーフードは進化を遂げ、開栓してすぐに食べられる「瓶詰タイプ」、お湯を注ぐだけでできる「粉末・フレークタイプ」、「フリーズドライタイプ」、お湯やレンジで温められる「レトルトタイプ」など、さまざまな商品が販売されています。

 

ベビーフードの適切な使い方

厚生労働省が昭和60(1985)年に実施した「乳幼児栄養調査」では、ベビーフードの使用状況について、「よく使用した」9.7%、「時々使用した」38.5%、「ほとんど使用しなかった」51.8%で、約半数の家庭でベビーフードを使用していました。
平成17(2005)年の同調査では、「よく使用した」28.0%、「時々使用した」47.8%、「ほとんど使用しなかった」24.2%でした。「よく使用した」は昭和60(1985)年の3倍増で、「時々使用した」と合わせると75.8%に上っています。
まだ詳細な結果が公表されていませんが、平成27(2015)年の同調査では、さらに使用率が上昇しているかもしれません。

赤ちゃんの月齢に合わせた味つけ・栄養バランスになっていて、簡単な調理で適量をすぐに食べさせられることから、ベビーフードの使用率が高くなっていることもうなづけるのですが、ひとつ気になるデータが…。

平成17(2005)年の「乳幼児栄養調査」によると、離乳食でベビーフードをよく使用した親の方が、ほとんど使用しなかった親よりも、子どもが1歳以上になった時に「遊び食い」、「偏食」などに悩む割合が1割以上高いという傾向が見られました。

親の「離乳食を作るのが負担、大変」と思う気持ちが、ベビーフードの多用につながり、料理にかける手間を惜しんでいるのだとしたら、子どもが食事によって得られる満足度も低くなり、遊び食いや偏食を引き起こす要因となっているのかもしれません。

厚生労働省では、「ベビーフードの使用自体は問題ないが、使い方に配慮する必要がある」として、「授乳・離乳の支援ガイド」でベビーフードの活用方法を指導しています。参考にしてください。

○ベビーフードを利用するときの留意点平成19年「授乳・離乳の支援ガイド」より)

・子どもの月齢や固さの合ったものを選び、与える前には一口食べて確認を。
子どもに与える前に一口食べてみて、味や固さを確認するとともに、温めて与える場合には熱すぎないように温度を確かめる。子どもの食べ方をみて、固さ等が適切かを確認。

・用途にあわせて上手に選択を。
そのまま主食やおかずとして与えられるもの、調理しにくい素材を下ごしらえしたもの、家庭で準備した食材を味つけするための調理ソースなど、用途にあわせて種類も多様。外出や旅行のとき、時間のないとき、メニューを一品増やす、メニューに変化をつけるときなど、用途に応じて選択する。不足しがちな鉄分の補給源として、レバーなどを取り入れた製品の利用も可能。

・料理名や原材料が偏らないように。
離乳食が進み、2回食になったら、ごはんやめん類などの「主食」、野菜を使った「副菜」と果物、たんぱく質性食品の入った「主菜」が揃う食事内容にする。料理名や原材料を確認して、穀類を主とした製品を使う場合には、野菜やたんぱく質性食品の入ったおかずや、果物を添えるなどの工夫を。

・開封後の保存には注意して。食べ残しや作りおきは与えない。
乾燥品は、開封後の吸湿性が高いため、使い切りタイプの小袋になっているものが多い。瓶詰やレトルト製品は、開封後はすぐに与える。与える前に別の器に移して冷凍又は冷蔵で保存することもできる。表示(注意事項)をよく読んで適切な使用を。衛生面の観点から、食べ残しや作りおきは与えない。

(参考)

平成27年度 乳幼児栄養調査結果の概要 |厚生労働省

創業ものがたり05|離乳食、粉ミルク、ベビーフードの和光堂

日本ベビーフード協議会|協議会について|日本におけるベビーフード市場の変遷

厚生労働省|授乳・離乳の支援ガイド

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