お尻ふき
2016.01.21
ウエットティッシュの出現
赤ちゃんのおむつ交換のとき、陰部やお尻の汚れをふきとる「お尻ふき」。じいじ・ばあばから上の世代は、ガーゼやコットン、お古のタオルや古着をだいたい同じ大きさに切ったものを使っていました。お尻ふきだけでは汚れを落としきれない場合は、お尻だけバケツや洗面器で洗う「座浴」を行っていたのです。
現在のように「赤ちゃん用のお尻ふき」として使い捨てのウエットティッシュが使われるようになったのは、昭和53(1978)年ごろです。
そもそもウエットティッシュ自体、赤ちゃんのお尻ふき用として1970年代初頭にアメリカで生まれたもの。日本では昭和48(1973)年に初めてウエットティッシュが発売されました。70枚入りで800円前後と、やや高額で、3年後に販売中止となりました。
ところが、昭和53(1978)年に育児用品メーカーから衛生面に配慮したボトル型ウエットティッシュが発売されると、これが大ヒット。
その後、ウエットティッシュの赤ちゃん用お尻ふきは容器のバリエーションが増え、携帯用にフィルムパックタイプ、家で使うときにはボックスタイプなど、TPOに合わせて使用することができるようになりました。シートの素材や溶液の成分もニーズに合わせて改良が進んでいます。
現在、赤ちゃん用お尻ふきは、赤ちゃん本舗、花王、西松屋、ピジョン、ユニ・チャーム、和光堂などの国内メーカーのほか、外国製品も含めてたくさん出回っています。
ユニ・チャームの調査によれば、ママたちがお尻ふきを選ぶ際に重視する要素としては、
1位 かぶれたり赤くなったりしないこと
2位 肌にやさしいこと
3位 汚れがきれいにふけること
でした。
1位の「かぶれたり赤くなったりしないこと」と2位の「肌にやさしいこと」はシートの素材(やわらかさ)や溶液の成分(添加物)を重視しているので、1位と2位はほぼ同じポイントといっていいでしょう。
従来、赤ちゃん用お尻ふきは、雑菌やカビが繁殖しないようにアルコール成分、防腐剤や殺菌剤が使用されており、それがおむつかぶれを引き起こす一因となっていたのです。
それを嫌うママの自然志向、健康志向に応える形で、平成17(2005)年、無添加の赤ちゃん用お尻ふきとして、「水99%Super」が赤ちゃん本舗より発売されると、たちまち人気商品となりました。
3位の「汚れがきれいにふけること」については、今は1枚でもしっかり汚れをふき取れるように、シートが厚手・大判化し、水分量も多い製品が増えています。量販店で海外の赤ちゃん用お尻ふきをまとめ買いすることも一部でブームになりました。
ユニ・チャームの調査によると、生後3か月ぐらいまでのおむつ替えの回数は一日10~12回。お尻ふきをおしっこで平均1~2枚、うんちで平均4~6枚、1か月平均250枚使っています。
一日に何回も赤ちゃんのデリケートな部分をふくわけですから、しっかり汚れを落とすことができる一方で、身体に害のないものを選びたいですよね。
新生児期は肌にやさしい素材、離乳食期からは汚れをふき取りやすい厚手・大判のもの、お出かけやトイレトレーニング期にはトイレに流せる素材というように、赤ちゃんの成長と場面に応じて、数種類の商品を使い分けるというのも、賢いやり方ですよ。
一方、おむつかぶれに悩んだり、添加物が心配だったりなどの理由で、ウエットティッシュのお尻ふきを使用しないで、昔ながらの布おむつやガーゼ、コットンを使用したり、後述の「お尻シャワー」などを併用したりなどで対応するママも多いようです。
ネットなどでユーザーの意見を参考にしたり、まずは少量を購入して試してみたりなどで、自分自身が納得できるお尻ふきをチョイスしましょう。
多種多様、お尻ふきアイテム
赤ちゃんのお尻ふきが進化する一方、一般のトイレにも技術革新の波が訪れています。日本が世界に誇る先端技術のひとつが温水洗浄便座ですが、昭和55(1980)年に発売を開始して、35年を経た平成27(2015)年、一般家庭への普及率は77.5%に達しました。
いわゆるウォッシュトイレが当たり前になったことで、その影響が赤ちゃんのお尻ふきにも現れています。
平成12(2000)年ぐらいから、赤ちゃんのお尻を洗い流す道具として「お尻シャワー」が登場。プラスティックボトルに40度以下のお湯か水を入れて、容器本体を押すと、小さな穴が開いたキャップからシャワー状にお湯や水が出る便利グッズです。座浴をするよりも、手軽にお尻を洗い流せるということで、口コミで広がりました。
現在は100均で売られているドレッシングボトルやノズル付きボトルで代用する例も見られますが、やはり赤ちゃん用として最適化された商品として、今も根強い人気です。
そして、「お尻シャワー」の進化形として登場したのが、お尻ふき用の温水ポット。スプレーボトルに水を入れて、専用容器にセットしておくと、約90分で30~40度に温められる装置で、いつでも適温のお湯でお尻を洗えるということで、人気を集めています。
また、冬場などにひんやり冷たいウエットティッシュでお尻をふくと、赤ちゃんがびっくりすると考えたママも多かったのでしょう。
1990年代後半から、お尻ふきを丸ごと温める「お尻ふきウォーマー」が登場しています。電気で温めるので、コンセントがある場所でないと使えない点がユーザーの不満だったのですが、現在はコードレスタイプも登場しています。
そして、ウエットティッシュではなく、コットンを利用する人向けの商品が、「お湯でコットンお尻ふき」。内蔵ヒーターで35~45度のお湯をキープしており、お尻ふき用のコットンを直接ポンプの吹き出し口に押し当てるだけで、適度な湿り気を与えることができる装置です。
じいじ・ばあば世代にとっては初めて見る商品が多いので、「これって本当に必要なの?」と思う場合もあるかもしれません。
しかし、温水洗浄便座の快適さに慣れてしまうと、後戻りできなくなるように、赤ちゃんのお尻ふき周りにも、ユーザーの声を反映した便利な商品がどんどん生まれてきています。
革新的な商品というのは、案外こういう身近なところから生まれるものかもしれませんね。
(参考)
出産準備 肌にやさしい「お尻ふき」の選び方|プレママタウン一般社団法人 日本衛生材料工業連合会 ウエットティシュ・紙おしぼり
『総まとめ くるくる変わる「育児の常識」』女性セブン(編) 小学館